令和元年10月17日、特定非営利活動法人 ほっかいどう学推進フォーラムの設立を記念して、「ほっかいどう学推進フォーラム設立記念シンポジウム」が盛大に開催されました。約180名の皆さまにご来場いただき、本法人の活動意義が共有されたと同時に、北海道の歴史認識を新たにする機会となりました。
開会にあたり、主催者を代表して、新保元康理事長より開会の挨拶、来賓として、国土交通省大臣官房審議官 倉内公嘉氏から祝辞が送られました。
1.開会挨拶
特定非営利活動法人 ほっかいどう学推進フォーラム 理事長
新保 元康
「世界の北海道」の実現に向けて「ほっかいどう学」の推進を
37年間の教師生活を通じて、北海道の子どもたちには、この広大な北海道を学ぶ機会が足りないとずっと感じてきました。北海道の自然を支えている「人々」、「仕組み」を、未来に繋がる子どもたち、大人にも伝えていくことは我々の大事な使命です。本法人を「世界の北海道」の推進に向けた未来へ進むプラットフォームとして、皆様と共に「ほっかいどう学」を前進させていきたいと考えています。
2.来賓挨拶
国土交通省大臣官房審議官
倉内 公嘉 氏
先人が切り拓いた「北海道」を知ることが「未来の北海道」につながる
本日はNPO法人設立おめでとうございます。法人設立あたり、企業をはじめ大変多くの方々にご協力を賜りました。「ほっかいどう学」は第8期北海道総合開発計画(以下、8期計画)にも位置付けられている大事なアプローチの一つです。先人の努力、苦労によって今の北海道が存在します。北海道のことを知り、愛着をもっていただくことが、将来の北海道にとって非常に重要であると感じています。
続いて、ほっかいどう学推進フォーラムの設立経緯、目的、活動内容について、原文宏事務局長より報告がありました。
3.ほっかいどう学推進フォーラムの目的・活動内容について
特定非営利活動法人 ほっかいどう学推進フォーラム 事務局長
原 文宏
NPOは包括的な北海道の学びを、あらゆる人に提供するプラットフォーム
本法人の役割は、これまで別々に動いていた様々な関連する活動を「ほっかいどう学」として体系化し、行政、民間とで連携しながら、あらゆる人を対象に意図的に展開し、北海道の学びを広めていくことであると認識しています。設立当初から計172の団体・個人の皆様にご参加いただき、感謝を申し上げるとともに、皆さまの期待に応えるべく、決意を新たにしています。
目的:
より多くの人々が地域づくりに関心を持つ契機を創出するため、北海道の魅力や地理、歴史、文化、産業等を「ほっかいどう学」として、子どもから大人まで幅広く学び、地域に関する理解と愛着を深める取組を促進することを目的
活動内容:
- 北海道の魅力や地理、歴史、文化、産業等の調査研究、知識や理解の向上に関わる事業。
ほっかいどう学通信の発行
ほっかいどう学ツアーの開催
ほっかいどう学商品パッケージ制作 - 主体的な社会形成者としての意識を高め、自分たちのまちづくり・地域づくりに積極的に参画する人材の育成に関わる事業。
出前講座の実施 - 社会基盤の整備が、自分たちの日常生活や安全、社会経済活動と密接に関係している事の知識や理解の促進に関わる事業。
ほっかいどう学教材の開発 - 本法人の目的に関わる行政・学校・地域・企業との連携と交流を促進し、その成果と意義を広く伝える事業。
シンポジウム・セミナー等の開催
▲ほっかいどう学推進フォーラムの設立目的と活動内容
続いて、「古地図と歩く北海道~札幌と周辺を中心に~」と題して、(株)あるた出版編集部部長 和田哲氏より、基調講演をいただきました。古地図や写真などの貴重な資料をもとに、橋梁、道路開削の歴史的経緯、地名の由来などの興味深いエピソードをご紹介いただき、知られざる北海道の歴史や魅力を再認識する機会となりました。
4.基調講演 「古地図と歩く北海道~札幌と周辺を中心に~」
(株)あるた出版編集部部長
和田 哲 氏
講演者プロフィール:1972年札幌生まれ。日本大学法学部ご卒業後、広告代理店を経て2012年(平成24年)に、あるた出版に入社。古地図や古い写真から札幌の歴史をひもとき、「オトン」の連載や、講演活動で発信。
北海道には、人間味あふれ、愛すべき歴史がたくさん眠っている
続いて、「ほっかいどう学に期待する」と題して、平野令緒氏(北海道開発局建設部長)、和田哲氏(㈱アルタ出版編集部部長)、今井太志氏(公益財団法人アイヌ民族文化財団専務理事)、石本歩氏(札幌市立緑丘小学校教諭)の4名のパネリスト、コーディネーター新保元康理事長によるパネルディスカッションが行われました。セッション1では、北海道に生きる人々がアイヌ文化を含め北海道の歴史を知らないという問題意識が共有されました。セッション2では、「ほっかいどう学」への期待として、適切な資料、情報提供をはじめとして、子どもから大人まで、北海道の歴史、現状を学び、未来の北海道のあり方を考えさせる機会を提供するプラットフォームとしての役割について各機関との連携などが提案されました。
5.パネルディスカッション「ほっかいどう学に期待する」
■セッション1:北海道とのかかわりや問題意識
〇平野 令緒 氏(北海道開発局建設部長)
北海道の人間が北海道を知らない
北海道の歴史は短いといわれがちだが、掘り起こせば確かに歴史が存在する。我々北海道の人間がまずは、北海道を学ばなければならない。
〇石本 歩 氏(札幌市立緑丘小学校教諭)
先人の想いや苦労は子どもたちに響く
小学校6年生を対象に、北海道の開拓使の当時の想いを考えさせたり、開拓の苦労を実際に体験させる授業を実施した。こうした授業を通じて、自分たちが暮らす北海道に対する子どもたちの考え方や見方が変わっていく様子が確認できた。
〇今井 太志 氏(公益財団法人アイヌ民族文化財団専務理事)
今も続くアイヌ文化を知ることは北海道を知ること
アイヌ文化は「ほっかいどう学」の重要なパーツ。4月にオープンする「国立アイヌ民族博物館」は、民族舞踊や様々な体験を通じて、アイヌ文化が今も生きている文化であることを感じていただけると思うし、それを通じて、北海道にとってのアイヌ文化との共生の意味を考えることができる施設になっていると思う。
〇和田 哲 氏(㈱アルタ出版編集部部長)
北海道の中で北海道の歴史を共有すべき
本州とは異なる北海道独自の歴史、文化があることを、もっと北海道の中で共有する必要がある。例えばアイヌの人々は文字を使わず、統一政府ももたずに、800年以上の歴史をもつ世界でも珍しい民族。自然と共生し、世界と交流してきた彼らの独特の文化、生き方を北海道に生きる人々が最初に学ぶ必要がある。
■セッション2:ほっかいどう学に期待すること
〇今井 太志 氏(公益財団法人アイヌ民族文化財団専務理事)
アイヌ文化を知ることは北海道に生きる人々の人生を豊かにすること
「知る」ことは本来楽しいことであり、人生を豊かにする。「ほっかいどう学」を通じて、アイヌ文化を知ることが人生を豊かにすることに通ずる、ということを、広めていただきたい。修学旅行生だけでなく、企業の方にもぜひ、国立アイヌ民族博物館にきていただきたい。
〇和田 哲 氏(㈱アルタ出版編集部部長)
子どもたちが北海道の現実を知り、未来を考えるきかっけづくりを
子どもたちには、今の北海道の厳しい現実を知り、何故そうなったかの理由を考えてほしい。そのときに大切なことは、北海道は全国標準では語れないということ。本州とは異なる北海道の未来をどうしていくのか、そういったことを子どもたちに考えさせるきっかけづくりを「ほっかいどう学」には期待したい。
〇石本 歩 氏(札幌市立緑丘小学校教諭)
「ほっかいどう学」を教えるための適切な資料、情報提供を
子どもたちに歴史を正しく教えるための資料、情報収集は一般の教員の立場では非常に難しい。「ほっかいどう学」には信頼性のある適切な資料や情報の提供、専門機関への取次などの協力を期待したい。
〇平野 令緒 氏(北海道開発局建設部長)
日本における北海道の役割、位置づけを伝えたい
子どもたちには、北海道開拓の意義、日本の中の北海道の立ち位置を教えていきたい。大人にも知ってほしい。インフラツーリズや出前講座、資料提供など、学校、NPOと連携して、取り組んでいきたい。
●新保理事長
パネリストの皆さまには、北海道には本州とは同じ基準で語れない歴史、文化が存在すること、そして、そのことを北海道に生きる人間が知らない、学んでいない、という非常に重要な問題提議をいただいた。そして、こうした状況を変え、未来の北海道を築いていくために、「ほっかいどう学」への期待として、「よい資料」、「確かな資料」を提供するプラットフォームとしての役割を具体的にご提案いただいた。埋もれている貴重な資料を「わかりやすく伝える」ことが重要。皆さまと力を合わせて取り組みたい。