第10回ほっかいどう学インフラツアー

ほっかいどう学インフラツアー@寒地土木研究所

開催報告

 令和7年8月19日(火)、当法人主催による「第10回ほっかいどう学インフラツアー札幌周辺編」が開催されました。今回は、教育関係者や建設業、行政職員、一般参加者など多様な立場の方々が集い、寒地土木研究所を訪問し、北海道の社会資本整備を支える研究所の役割を学ぶ貴重な機会となりました。

研究所の沿革と役割


 冒頭では、研究所の沿革が紹介され、北海道の自然条件に挑み続けてきた土木技術者の歩みが振り返られました。研究所の初代室長である高橋敏五郎、小樽北防波堤を築いた廣井勇や治水事業に取り組んだ岡崎文吉をはじめとする技術者の功績は、北海道の基盤整備を支えた大きな柱であり、こうした先人の努力が今日の研究基盤につながっていることが解説されました。

 研究所が担う使命について3つの視点から紹介いただきました。気候変動に伴い自然災害が激甚化する中で、治水施設やハザードマップの高度化、橋梁の耐震補強などを通じて人々の命と暮らしを守ってきたことは、その第一の役割です。さらに、北海道ならではの厳しい気候条件に対応し、凍結と融解による道路や構造物の損傷に向き合い、長寿命化のための技術開発など、社会資本を持続的に維持管理することも重要な任務とされています。そして近年は、地域生活の質を高める研究も広がっており、例えばAI画像認識を活用した路面雪氷推定システムが冬道の安全確保に貢献していること等が紹介されました。

景観と無電柱化


 続いて、景観と無電柱化に関する研究が取り上げられました。景観は「人間を取り巻く環境の眺め」として捉えられ、美観にとどまらず生活環境全体を豊かにする視点が重要であることが説明されました。無電柱化の分野では、寒冷地向けに浅層埋設の深度を従来の120cmから60cmにする技術的改良や、トレンチャーを活用した効率的施工の工夫が紹介されました。さらに、電柱を片寄せや住居の裏側に配置する、樹木で遮蔽するなど、従来の「地中化」だけに頼らない多様な方法も示されました。

 また、教育的な取り組みとして、小学生向けの無電柱化学習プログラムも紹介され、クイズや模型を通して学ぶことで、景観や暮らしへの関心を深める活動の意義が語られました。

実験施設の見学


 後半は研究所内の実験施設を見学しました。模型を高速回転させて実物と同じ条件を再現する遠心力載荷装置や、流水を再現して治水対策などを検証する河川模型といった、普段目にすることのない実験設備が披露されました。参加者は専門的な解説に熱心に耳を傾け、多くの質問を投げかけながら、研究の重要性を改めて実感する機会となりました。

まとめ


 今回のツアーでは、寒地土木研究所の歴史と使命を学ぶとともに、施設見学を通して研究開発の現場を体感することができました。参加者からは「北海道特有の課題を深掘りでき大変参考になった」「無電柱化に地中化以外の手法があることを初めて知り、新しい視点を得られた」「教材研究につながるヒントが多かった」といった声が寄せられ、教育的な観点からも学びと発見に満ちた一日となりました。

 最後に、本ツアーの実施にあたりご協力いただいた寒地土木研究所の皆様に、心より御礼申し上げます。