ほっかいどう学連続セミナー:第11回

人口減少・学校減少…留萌の地域学習どうする!

~地域学習×デジタル×インフラでつくる留萌の未来~

令和6年11月22日(土)、当法人の中核的な活動の一つとして北海道各地区で開催する「ほっかいどう学連続セミナー」の第11回連続セミナーが開催されました。
(※文中の役職は開催日当時のものです。)

開会にあたり、主催者を代表して、新保元康理事長より開会の挨拶が述べられました。

開会挨拶


特定非営利活動法人 ほっかいどう学推進フォーラム 理事長 新保 元康

本日は、連続セミナーにご参加いただき、誠にありがとうございます。当フォーラムは設立6年目を迎え、これまで全道各地で10回のセミナーを開催してまいりました。今回はその2巡目の最初の回となります。特に注目すべきは、GIGAスクールの中で開発を進めているデジタル副読本です。ここ留萌でその第一弾を作成いただいています。子どもたちがパソコンを使って学ぶ環境が整いつつあり、デジタル技術を駆使した教育の進化を感じていただけることと思います。さらに、今日は留萌の教育をはじめとする地域づくりの活動を盛り上げることを目的に、皆様と共に新しい視点を共有し、発展させていきたいと考えています。引き続き、ほっかいどう学や地域の皆様のご支援を賜りながら、より良い未来を築いていければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

開催地挨拶


北海道開発局留萌開発建設部 部長 林 華奈子 氏

本日が連続セミナー2巡目第一号ということで大変うれしく思っております。ご登壇者の皆様には新たな留萌の魅力についてお話いただき、教育、そして留萌の人づくり、まちづくりにつながるようなお話を伺えることを楽しみにしております。皆さんと良い時間を共有できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

発表① デジタル動画とデジタル副読本で留萌の学びをつくる


留萌市立留萌小学校 高橋 基文 氏

「道の駅」は歴史的にも留萌の交通の要所であったことから、地域の歴史を学ぶ上で適材であること、また、その機能は、防災施設、地域の情報発信など、公共施設といえることから教材化が適切であると考えました。そこで開発局さん等のご協力のもと「道の駅」をテーマにした動画を作成し、小学校の3年生の地域の歴史を学ぶ単元で活用しました。

動画は、道の駅の役割や重要性を紹介するものでした。特に、道の駅が地域の情報発信や観光、公共施設としての機能を持つことに焦点を当てました。事前にまち探検を行い、道の駅の施設を見学しました。授業では、子どもたちに道の駅の役割について考えさせ、子どもたちは動画を見ながら、道の駅は、単なる休憩所や物販施設ではなく、地域の情報を提供し、防災や子育て支援、地域の集いの場としても機能していることを学びました。また、道の駅がどのように地域を活性化させるか、また交通手段の変化が地域に与える影響についても考察しました。特に、鉄道から自動車に移行したことで道の駅が重要な交通拠点となったことを学びました。

動画を使って短時間でポイントを押さえた情報を視覚的に提供することで、子どもたちは集中して学ぶことができました。また、パソコンを使って自分のペースで視聴できるため、各自が興味のある部分を繰り返し見たり、拡大して見たりすることができ、教科書や資料だけでは伝えきれない、道の駅の多様な役割や地域に与える影響を、視覚的にわかりやすく伝えることができました。

地域学習は大切ですが、留萌のことに詳しい教師や関心を持つ先生が少なく、最近は先生方の関心や研修の方向性が授業の進め方や課題の多い生徒への対応が優先されているように感じています。先生方も忙しく、地域教材を作る余裕がないのが現実です。こうした課題認識から現在は、GIGAスクールの環境を活かした地域学習として、留萌地域のデジタル副読本の作成に取り組んでいます。

発表② 国語トライアル授業 鬼鹿小学校3・4年生

『オロロンラインで一句』
~留萌の道や風景の好きなところ、すごいところ、おもしろいところを伝えよう~


小平町立鬼鹿小学校 藤井 志帆 氏

身近な「道」や「風景」に関心をもち、俳句や短歌を使って、感じたことを言葉で表現できるようになることを目標に国語でトライアル授業を行いました。最初に社会科見学を行い、バスの窓から写真を撮り、道や風景に触れることで、子どもたちは道がどこへでも行ける手段であり、道がなければ生活が成り立たないことに気づきました。子どもたちは風車や牧草ロールを見て楽しみながらも、その風景からさまざまな感想を抱いていました。

3年生は俳句、4年生は短歌を学んでおり、子どもたちは写真を見ながらそれぞれの感想を表現しました。写真を選んだ理由を発表し、道や景色を詩に込めて表現しました。例えば、ある子どもは「大事なものが詰まっている」という理由で写真を選び、交通や安全をテーマにした詩を作成しました。発表会では、子どもたちは自分の作品を楽しんで発表し、他の子どもの作品にも共感しました。授業後、子どもたちは道や風景がなぜきれいなのかを考え、作り手や背景に思いを馳せるようになりました。特に、開発局の方が「なぜ道がきれいなのか?」と問いかけたことで、子どもたちは自然や道を大切にする気持ちを深めました。

授業を通して、子どもたちは自分の感情や考えを言葉で表現する力を高めたと同時に、道や風景を作り上げる人々や背景に対しても思いを巡らせることができました。発表会の振り返りでは、道や風景が「きれい」だと感じる理由について、子どもたちが自分なりに考え、それを言葉にすることができたのが印象的でした。また工事現場を見学するなど、実際の体験を通じて学びを深め、道に対する関心も高まりました。この授業は、子どもたちの創造力や思考力を引き出す良い機会となりました。この経験をもとに、さらにSDGsなどの学びに繋げていきたいと考えています。

発表③ 「留萌の地域学習を応援します!~建設業ができること~」


萌志会(留萌建設協会二世会)会長 堀口 哲志 氏

私たち萌志会は、留萌管内の建設業を担う会社の後継者たちが集まり地域学習の支援を行っています。具体的には、地域の小中学校や高校で出前授業を行い、子どもたちに土木の魅力を伝えたり、現場見学を通じて建設業の仕事を紹介してきました。特に注力しているのは、地域の課題に取り組むことです。昨年、全道大会を主催し、「地域と建設業の再生」をテーマに、人口減少や少子高齢化が抱える課題について議論しました。この大会を通じて、教育関係者や学生との交流が深まりました。昨年は、初めて中学生や高校生と連携し、地域の子どもたちが自分たちの町をどうしたいかを話し合う時間も設け、地域の課題について共に考える貴重な時間となりました。

コロナ禍で現場見学が難しくなった際には、VRゴーグルを使って土木技術を体験できる新しい方法を導入しました。これにより、子どもたちは遠隔操作で重機を体験したり、ドローンを使った測量の体験をすることができました。こうした技術を通じて、現場の魅力を伝えるだけでなく、将来の仕事に対する興味を持ってもらうことを目指しています。

さらに、私たちの会社は、建設現場での生産性向上のために遠隔で現場検査を行うシステムや、除雪作業の効率化を進めるAI技術を開発し、これらの技術を教育活動にも取り入れています。子どもたちに新しい技術を紹介し、興味を持ってもらうことで、将来の担い手としての意識を育みたいと考えています。

今年12月には産業能率大学の藤岡慎二教授と一緒に「土木の要素を盛り込んだSTEAM教育」を実施する予定です。このプログラムでは、土木技術を学びながら、プログラミングやAIの理解を深めることができます。私たちが大切にしているのは、子どもたちに誇りを持って働く姿を見せることです。子どもたちに土木技術の面白さを伝え、私自身も楽しんで仕事をしながら、地域に貢献し、子どもたちにその大切さを伝えていきたいと思っています。

パネルディスカッション


<参加者から感想共有>

  • 日高でみち学習に携わっています。デジタル副読本にえりも岬が載っていることが嬉しく、子どもたちも自分の町が紹介されていることに喜びを感じるだろうと思いました。日高でも生活に不可欠な道路ということで、黄金道路をテーマにした動画作成を進めています。どういった切り口が良いのか、皆さんのお話をお聞きしながら考えています。また、堀口さんのような魅力的な建設業の方がえりもにも来ていただければ、子どもたちの新しい視野を広げることができるのでは、と感じました。
  • 旭川で5年生を担任しています。みち学習に関わったのは2年前に指導主事と共に授業をしたのがきっかけです。最初は「道路」に関する授業だと思っていましたが、徐々に内容が深まり、昨年は防災をテーマに複数の動画を作成し子どもたちが自分で問を立て、調べる授業を行いました。動画クリップは問の解決のきっかけとして非常に有効だと実感しています。また、今日の話を聞き、動画の背景や作成者の思いが印象に残り、留萌の動画を自分の授業でも使いたいと思いました。教育の重要性を再確認し、旭川でも頑張りたいと感じました。

<コーディネーター 新保元康 理事長>

道の駅の動画がありましたが、例えば、トイレがきれいで便利だとか、そばが美味しいことは知っていても、道の駅の背景やその深い価値について子どもたちに教えることができる先生は少ないと思います。

北海道には食料、観光、エネルギーという代替できない価値があり、その価値を生む生産空間は札幌ではなく、北海道の周辺部分にあります。ところがその周辺部の人口減少が進んでいます。

北海道は「二重の疎」とも言われ、集落同士が離れている上に、集落内でも離れている。本州ではコンパクトシティと言われていますが、北海道では定住がなければ生産空間が維持できません。定住ということは家族ができる。つまり教育が重要になってきます。デジタル技術を活用しながらインフラネットワークによって都市と生産空間を結び、魅力的なまちづくりが求められます。

留萌と面積が近い鳥取県を比較すると、留萌は人口が4万に対して鳥取は57万で、小中学校の数も鳥取174校、留萌28校と大きな差があります。過疎地域では子どもや先生が不足しており、教育維持が困難です。デジタル技術を活用した教育支援が今後ますます重要であり、NPOや開発局との連携で地域学習の充実が求められています。ここからは皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

<地域での困りごと>

藤井氏:人数が少ない学校では、コミュニケーションが不足しがちで、家族のような関係は良い一方、社会性を身につける場が少なく、学校生活におけるけじめがつきづらい点がある。また、習い事やスポーツチームが作れず、練習が頻繁にできないことが保護者の悩みとなっている。

高橋氏:留萌の小学校では働き方改革が進んでおり、早く帰る先生が増えた一方で、どのような内容を教材にすると子どもたちは楽しく学べるか、など中身を考える機会が減ってきている。

新保:教育現場では、残業が多い職業という印象があり、若い人が入ってこない。時間内で終わり、その後は自分の時間を使えるようにしているが、終わった後の勉強や成長の機会が制限されたり、自己研鑽の受け皿も不足しているように感じる。楽しければ勉強できると思う。

堀口氏:昔は残業して稼ぎたいという人が多かったが、今は時間を減らして収入を得たい。除雪オペレーターの不足など、働き手が減少している現状はある。デジタル技術やAIを活用して省力化できる部分は進めている。

<留萌の強みを知って、留萌で生きる、稼ぐを実現する地域学習とは>

堀口氏:雪は我々にとって災害のように感じるが、外から見ると観光資源でもある。冬も夏も訪れるためには、道路やインフラが不可欠。留萌に住んでいると大変だと言われるが、大きな災害もなく、地元業者の支えがあり、食べ物も美味しい。教育面では、デジタル技術を活用し、全国同一水準の教育が提供できれば、留萌での生活が魅力的に感じる人が増えるのではないか。

藤井氏:子どもたちは、自然の美しさや海や山の良さを感じるとともに、橋や道路の安全性についても考えられていた。都会では車が多く危険な場所もあるが、留萌はのんびりとした環境が魅力的だと思う。

新保:子どもたちは美しい自然や風景には気づくが、その背景に何があるかを教えてあげるのは、やはり先生の目が大事。

以上