第2回ほっかいどう学インフラツアー

北海道遺産石狩川を知り尽くす旅

~歴史に残るショートカットはここから始まった 生振捷水路~

開催報告

 令和2年10月24日(土)に、当法人主催による「第2回ほっかいどう学インフラツアー」を開催しました。本企画は、「世界の北海道」を支える人材育成に向けた当法人の中核的な活動の一つとして全道各地で開催を予定しているもので、第1回露天掘りツアーに続く、第2回目は「北海道遺産石狩川を知り尽くす旅」と題し、開発に関わる皆さまのご協力のもと、学校教育に携わる教員の先生方にご参加いただきました。

 新型コロナウィルス感染症拡大防止の観点から、今回は参加人数を最小限に制限しての開催となりましたが、北海道の雄大な自然とその中で生活の基盤を支えるインフラの重要性、仕組みを学び、北海道の多様なる魅力と可能性を再発見していただく良い機会となりました。とりわけ、川の博物館見学や、弁天丸乗船などの実体験を通じた学びや、治水事業に携わる人々から直接話を聞く意義は大きく、参加者からは、「故郷北海道がより好きに、そして誇らしく思えた」、「どの学年でどの単元でどう教材化するか。石狩川にかかわる魅力は尽きません」、といったご感想をいただくことができました。

 半日足らずの短い行程ではありましたが、石狩川を巡る壮大なインフラ技術の学びと同時に、それらを造り、日々支えている技術者の誇りや、やり甲斐のようなものも感じていただけたのではないかと、主催者としても大変励みになる活動の一つとなりました。

開催概要

  1. 主催:NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム
    協力:一般財団法人石狩川振興財団
    後援:北海道開発局 北海道教育委員会 札幌市教育委員会
  2. 開催日時 10月24日(土) 9時集合~15時半解散
  3. 講師:米津仁司さま(国土交通省北海道開発局 開発監理部 次長)
  4. 大角賢一さま(一般財団法人 北海道河川財団)
  5. 参加者:NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム会員(教育関係者9名)

行程

  1. 合・川の博物館へ(9時~)
  2. 川の博物館見学・弁天丸乗船(9時半~)
  3. 昼食(13時~)
  4. 車窓から生振承水路を見学(13時半~)
  5. 雁来排水機場の見学・解散(14時半~)

1.集合・川の博物館へ


 今回のインフラツアーの移動は貸切大型バス。集合場所から最初の目的地である「川の博物館」への移動の間は、米津講師(北海道開発局)より、石狩川の全体像や治水事業の沿革、土地利用の変遷等についてポイントを押さえたわかりやすい解説をいただきました。

2.川の博物館見学・弁天丸乗船


 最初の見学先である「川の博物館」は、川のはたらきや石狩川の治水の歴史を学ぶことができる石狩地区の地域防災施設です。大角講師(北海道河川財団)からは、石狩川流域の全体図を使いながら、治水の歴史や、洪水対策の技術について解説いただきました。その後、弁天丸の乗船人数制限の関係で参加者を2班に分け、グループ毎に弁天丸の乗船、博物館管内での模型実験見学へと行程を進めました。

<模型実験>
 博物館管内には多くの貴重な資料や展示物がありますが、とりわけ参加者の興味を惹いていたのが、石狩川の治水の仕組みを再現した模型でした。雨が降り、洪水が発生し、家屋が流される様子、その対策として、洪水時には運河水門を閉鎖する一方で、放水路を開放し、水を流し、平地の水が引いていく、という治水の仕組みが、大きくはない模型の中に忠実に再現される様子は興味深く、参加された先生からは「こんな模型が学校にあったら、子どもたちは大喜びするだろう」といった声も聞かれました。この他にも模型を使って承水路の仕組みを解説いただいたり、茨戸川の導水による水質改善の取り組みについて解説いただきました。

米津講師(北海道開発局)による石狩川に関する解説
大門講師(北海道河川財団)による生振承水路の解説
石狩川流域の治水の仕組みを再現した模型に見入る参加者
熱心に解説を聞き入る参加者
承水路の仕組みを体感しながら学べる模型

<弁天丸乗船>
 当初予定では、茨戸川から志美運河の水門を潜り、生振承水路を船の上から見学する予定でしたが、前日の天候の影響により川の水位が上がり、石狩川本川に出ることができなくなったため、急遽プログラムを変更し、茨戸川や真勲別川から樋門や水門などの治水施設を見学することとしました。船内では、北海道河川財団の方から茨戸川の水質や生態系、茨戸川流域を守る志美運河の役わりなどを解説いただきました。参加者の皆さんは船上から運河水門の大きさを感じたり、川辺に美しいサギを発見したりと、机上ではない体感しながらの学びを楽しんでいただけた様子でした。

弁天丸乗船
北海道河川財団の職員の方の解説に聞き入る参加者
船上からの景色を熱心に撮影する参加者
船のエンジンに見入る参加者
船内からの景色を熱心に撮影する参加者
弁天丸船上で解説を受ける参加者
弁天丸から撮影した運河水門

3.車窓から生振承水路を見学


 川の博物館を後にして昼食を済ませた一行は再びバスに乗車し、本川から見ることが叶わなかった石狩川生振承水路を、バス車内から見学することとしました。道路橋にさしかかり、車窓から生振承水路を目の当たりにすると、これが人工水路であるとは信じがたい圧倒的な存在感と、米須講師の解説も相まって、先人たちの苦労に思いをはせるひと時となりました。

車窓から撮影した石狩川生振承水路

4.雁来排水機場


 最後の見学先は豊平川の「雁来排水機場」でした。雁来排水機場では、北海道開発局の担当者の方から、排水機場の役割や茨戸川の浄化対策などの解説をいただきました。内水反乱を防ぐための巨大な排水ポンプや電源設備を目にした参加者からは、排水機場の仕組みに関する技術的な質問も出されるなど、有意義な時間となりました。

洪水による内水反乱を防ぐ「雁来排水機場」
吐水層を興味深く観察する参加者
施設内で解説に聞き入る参加者