融雪を専門に研究している児玉先生(北海道大学低温科学研究所)に回答をお願い致しました。
小学5年生にしてはたいへんむつかしい質問ですね。よく勉強されていることに驚いています。
さて、小学5年生のかたにうまくわかるように答えられるかどうか、あまり自信がありませんが、チャレンジしてみます。
>日が照っている日中に(影&日向)雪が融ける、融けない気温の境は一体何度なのですか?
雪の温度が0度の時、そこに熱が加われば雪は融けます。雪を融かすための熱の元は陽射し(太陽からの熱)が一番大きく、次に空気の熱(気温として表します)です。家の外で”気温”がなんどの時に雪に熱が加わり、何度になると熱が加わらないと言うことはできません。”気温”だけでは熱が加わるか、加わらないかが決まらないからです。
しかしながら、だいたいこういう気温なら融けて、こういう気温なら融けないと言うことができます。雪の温度が0度にならないと雪は融けません。雪の温度が0度未満ではどんな場合でも融けません。日が照っていて雪の表面がぬれている(0度の)場合、気温が0度以上ならばほとんどの場合雪は融けます。しかし、日差しが強いと気温が0度以下でも融けることがあります。気温が0度以下で低ければ低いほど日が照っていても雪は融けにくくなります。6月(日差しが強い時)に山の上に残っている雪は-4度でも融けることが報告されています。札幌では-2度位でも日差しが強ければ融けることがありますが、そのような場合、雪の表面は融けず、表面から数mm下のところが融けること(内部融解)があります。
雪の汚れのていどは雪に太陽の熱が加わりやすいかどうかと関係します。雪があるていどよごれていると雪に太陽の熱が加わりやすくなります。あまり汚れていると太陽の熱は加わりにくくなりますが。雪が融ける最低の気温は雪の汚れのていど(太陽の熱がくわわりやすいかどうか)にも関係します。
> それと夜や曇りのように日が照っていない時の雪が融ける、融けない気温の境は何度なのでしょうか? 湿度は60〜70としてできれば放射冷却等の細かいところも御教授願いたいです。
前にも書いているように、雪の温度が0度で気温が0度より高ければ雪は融けます。夜、雪の温度が0度でも気温が0度以下ならば融けません。しかし夜気温が0度以下ならば雪の温度は0度以下であることがほとんどです。曇りの日でも日中なら太陽からの熱は多少あるわけですから、気温が0度以下でも雪の温度が0度なら融ける可能性があります。どのくらいの0度以下の気温でも融けるかどうかは太陽からの熱の大きさによります。湿度の大小は雪が融けることにはあまり関係ありません。
”放射冷却”とかむつかしいことばをよく知っていますね。放射冷却について小学5年生にかんたんに説明することはできません。雪が融けることとの関係となると、さらにむずかしくなります。放射冷却は雪の温度に強く関係しますが、上に話したことは雪の温度が0度になっているときについて話しましたので放射冷却はあまり考えなくてもかまいません。
> そしてまだお訊きしたい事があるのですが、一番雪が多く積もる最高条件を教えていただきたいのです。 地上気温、上空1500M気温・5000M付近気温、湿度・風速、雪質等々できるだけ細かく御願いします。
これは私も知りたいことです。むつかしすぎて答えることができません。大学の先生が1ヶ月それだけを勉強してもわかるかどうかわからないくらいの質問です。小学5年生からこんなすごい質問をもらって、びっくりしています。
あまり答えになっていませんがこのくらいが私の力の限界です。すこしでもわかっていただけたらうれしいです。
(2003年03月19日 雪の先生より)
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