社会
児 童 札幌市立緑丘小学校
6年1組 男子21名 女子17名 計38名
指導者 佐野 浩志

1.単元名     身近な政治と暮らし〜札幌市の除雪は世界一?!
 
2.満足感を味わう学習にむけて
今の子供のとらえ

 緑丘の子供たちが住んでいる地域には、マンションが多く、実際に自宅の雪かきを手伝ったことがないという子も多い。6年1組では、除雪を「よくする13人」「時々する 8人」「ほとんどしない4人」「全くしない13人」という状況である。
 また、学習前には、「普段の除雪に対して不快に思ったことがある」という子が24人。理由は「夜間の除雪の騒音」「歩道除雪」「間口前に雪を残される」「排雪がされないため幅員が狭くなる」といった具合に、市に寄せられる要望とほぼ同じである。家庭での会話の中にも除雪に対する高い関心が見て取れるのではないだろうか。
単元のねらい

本単元では、「国民生活の安定と向上を図るために地方公共団体や、国の政治の働きが反映していることを具体的な事例を調べる活動を通して考えることが出来るようにする」ことが大切である。具体的な事例として,「身近な公共施設の建設,地域の開発,災害復旧の取組の中から選択」とされている。今回は,雪災害を具体的事例として,世界的にも類を見ない積雪寒冷地の大都市の都市機能を守る行政の取組を自分たちの生活とのかかわりから学習する。
 公民的な資質を育てるといった社会科の大きな目標も見据えながら取り組むことの出来る単元になればと考えている。
単元の主張

 世界的に見ても、年間平均5mもの累積積雪がありながら180万人もの人口がある都市はない。除雪のシステムは当然世界中の他に類を見ないものとなっている。しかしながら、そこに住んでいる住民(札幌市民)の市政に対する要望の中で26年間ダントツにトップを維持しているのもまた、除雪に対する要望なのである。
 除雪、雪問題についていえば、一つの問題を解決しようとすれば、ほかで問題が起きるといった「ジレンマ」的な要素も抱えている。社会教育なくしてはこの「ジレンマ」からはなかなか抜け出せないといった研究提言も出されているほどである。
 また、学級の子供たちはマンションなど集合住宅に住んでいる子も多く、除雪は誰かがやってくれているという意識は子供の中にはある。しかし、それがどのように政治と結びついて、自分たちの生活を支えているかということについて目を向けている子は少ない。
 だからこそ、子供たちが札幌市の除雪について調べ、それについて考えることを通して、除雪の問題を身近な問題として考え、それぞれの生活に生かしていくきっかけとなるように、この単元で除雪を取り上げたのである。この単元を通して自分たちの身近な社会事象と政治の結びつきを考え、さらに自分事としてとらえる中で学びを生活に生かすことの出来るような学習になればと考えている。
 
満足感
調べ,考えることから除雪の問題を自分事としてとらえられること。
 

3.研究の視点
視点1 自ら学び進める教材化
本物を求め、本物にひたることが出来る教材化 ○調べ学習や,体験を足がかりにして考えることができる。
具体的な事例(平成8年1月9日「冬台風」による都市機能麻痺)
を通した意欲の喚起
実際に除雪をしている人の工夫や苦労を実感し追求を深める


○外部の専門家との連携
除雪の学習は除雪のプロとつくる
単なるゲストティーチャーに終わらず単元の構成から一緒に
・北海道開発技術センター企画部長原文宏氏
・札幌市雪対策室計画担当係長品田英利氏
調査担当係長奥原裕幸氏
・札幌市中央区土木部維持管理課長飯田稔氏
維持管理課吉元雄次氏古源靖則氏
・中央区西部地区除雪センターセンター長神谷健治氏
生活とのかかわりから問題が生まれ、新たな見方・考え方から生活に戻ることができるような教材化 ○子供たちの多様な考えをもとに,自分の生活を見つめ直すことが出来
るような教材化
「市→事業者→市民」の流れから,札幌市の雪対策・事業者の取り組み,苦労,工夫を調べ,それらの財産をもとにわかり直したり,関係付けたりしながら,自分の生活を見つめ直し、さらに,学びの広がりが連続していくことが出来るような教材化。

○学びをもとに新たな見方や考え方へ
学習をもとに生活に戻り,新たな活動に広がることのできる学習の構成
 
視点2 よさが浮き彫りになり、見方・感じ方・考え方が高まる場づくり
調査活動で培われた見方や考え方が揺さぶられ、社会的事象が吟味される場の設定 ○既習とのズレから新たな問題意識を
「札幌市の雪対策は世界一だ」という既習をもとにした認識に「市政への要望がNO1! 「しかも26年間ずっと第一位である」という」事象をぶつけることで子どもの見方・考え方とのズレを生み,新たな問題意識を醸成する場の設定をする。

○既習を基に交流する中から自分事としてとらえられる場の設定
既習をもとにした自分の考えの交流から「市のシステムや,市の対,応だけに文句を言っていてもこの問題は解決しないのではないか」。という気づきが生まれ「自分たちで出来ることは?」という視点からも考えを深めていくことが出来るような場の設定をしていく。
表面的な価値ではない、実感のこもった社会的認識を ○子供を揺さぶる教師のかかわり
表面的な理解を揺さぶり,より自分事として考えを進められるような
教師のかかわりを大切にしたい。

○単元の始めと終わりでの意識の差が実感できるふり返り
単元のはじめでとった意識調査を単元の最後に行う意識調査を比べる
ことで,自分の除雪に対する意識の違いが実感できる。そのことで,
自分たちの学びの足跡を実感できるようにしていきたい。

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