05年8月雪プロセミナー
「夏こそ雪プロ in キロロ」基調提言まとめ
「『雪たんけん館』を授業で使ってみて」

岩手県奥州市立水沢小学校
教 諭  佐 藤 正 寿

1 私と「雪たんけん館」

 「雪たんけん館」については,3年前の日本教育工学会の論文集でその存在を知った。何回かアクセスしたことがあった。特に今年1月には,我が子が「雪の結晶」を冬休みの自由研究のテーマに選んだので参考にさせていただいた。その時には,「雪について本格的に学習するのには最適なホームページ」という印象を持った。
 さて,今回堀田先生のご紹介で「基調提言」の機会を与えていただいた。
 「授業で使ってみて」という点がポイントである。それ以外にも自分には一つのポイントがあると考えている。それは,「北海道以外の実践者の報告」という点である。
 
 子どもたちの雪に対する実態によって,実践のあり方も変わってくるであろう。たとえば,北海道以外でも粗く4つに分けられる。
A 雪を全く見たことのない子どもたち対象の実践
B 雪は見たことがあるが,ほとんど積もらない地域の子どもたち対象の実践
C 雪は積もるがあまり接点のない子どもたち対象の実践
D 北海道と同様に雪が積もる地域の子どもたち対象の実践
 本校はCに近い。今回はそのような実態からの報告である。

2 今回の「雪たんけん館」を使った実践

 今回授業実践の準備を始めたのが7月上旬。最初はひらすらホームページを見ていた。どのような形の実践を行うか考える。「ここは総合の追究学習にディープに活用できるな」「社会の一斉授業の中で使える写真が多いな」と教材開発が好きな自分にとっては嬉しいホームページだった。
しかしなかなか決定的な数時間の授業プランができない。充実したホームページあるが故,なかなか絞れなかった。
そこで,様々なパターンの授業を1時間ずつ行うのが今回はよいと考えた。様々な活用方法があるのであれば,短時間でいいからいくつかのパターンで行ってみようと考えた。実践した授業時間は5時間。ホームページから学習内容を組み立てるという方法をとった。以下のような実践で報告をする。(対象は5年生,35名)
  1.  ホームページにある方法(アンケート)を参考にしながら,「冬のくらし」について考える実践(総合的な学習・1時間)
  2.  雪に関わるテーマを決めて,追究する実践(総合的な学習・1時間)
  3.  除雪にスポットを当てて,携わる人の努力や工夫を考えさせる実践(社会・1時間)
  4.  ホームページを使っての子どもたちの声・私自身が活用しての声(2時間)

3 『雪たんけん館』を授業で使ってみて

★実践例1「冬のくらし」をリサーチしよう
1 使ったサイト 「雪を楽しもう 冬の遊び調査」
2 活用方法  @アンケート調査の手法の参考にする  A結果を比較する
3 授業の展開(総合・1時間)
  1. 課題「冬のくらしを調べ,北海道の子どもたちと比べよう」
  2. サイトと同じアンケートを学級でとる。ただし,話し合いで3つに絞る。「冬が好きかな?」「どのくらい外で遊ぶ?」「休み時間は中?外?どこで遊ぶ?」
  3. アンケートを分担して集計をして,簡単な表やグラフに表す。
  4. その結果を北海道の子どもたちの結果を比べる。
  5. 感想を発表する。
4 授業の様子
・調べ方の確認でHPを見せる。具体的な質問のモデル,円グラフや表等の結果の表し方があり,子どもたちは学習の見通しを持つことができた。
・アンケートは用紙に答えを書き,それを3つのグループが質問を分担 
して集計をした。
・自分たちの結果とHPの結果を比較してみて,改めて北海道の子どもたちとの違いに驚いていた。(例:冬に毎日外で遊ぶ→北海道10%,水沢小5年1組37%)
・感想 
★北海道の子どもたちが毎日外で遊ぶ子が10%だけで,「えーっ!」と思いました。それくらい外が寒いからかなと思いました。岩手はあまり寒くないのかな。
★やっぱり冬が好きなのは,北海道もわたしたちも一緒なんだと思いました。
5 使ってみて
  1. このサイトには子どもたちの「学び方」のヒントが書かれている。その点を意識して作成した
    サイトではないと思うが,北海道以外の地域の子どもたちが利用する時には「同じアンケート」→「結果集計」→「比較」という学習ができる。
  2. このアンケートは交流学習でも活用できる。「12月にはやっている遊びは?」といったアンケートを行えば結果の違いから相手校の様子を学ぶ。北海道以外の学校にとって興味津々である。
  3. 「学び方」のヒントになるものは,さらにくわしく情報を掲載したい。アンケートで使った用紙の情報があれば,子どもたちがアンケートをとる時のモデルになる。

★実践例2 雪と雪の中の生き物を知ろう
1 使ったサイト 「雪を観察しよう」「雪の中の生き物を探そう」
2 活用方法  @自分の課題の追究資料として
3 授業の展開(総合・1時間)
  1. 「雪の観察」「雪の中の生き物」のどちらかのテーマを選び,追究したい課題を作る。
  2. 課題について調べる。
  3. わかったことをキーワードでまとめる。
4 授業の様子
・本校児童は雪についてある程度知識があるので,学習課題が数多く出てきた。
・調べたサイトの多くに自分の課題がほとんどあって,子どもたちは熱中をして見ていた。
・調べやすさの簡単なアンケートをとった。
 「たいへん調べやすかった 43%」「やや調べやすかった 57%」
調べにくかった子は一人もいなかった。
・感想
 ★雪や結晶の種類がいっぱいあって,びっくりしました。また結晶は自分で作れることも初めてわかりました。(雪じゃなくても作れる!)作ってみたいと思います。
 ★雪の中に多くの虫がくらしていてすごいと思いました。また,雪の中の生き物はみんな寒さに強い生き物なのかを今度は調べたいです。
5 使ってみて
  1. 画像が豊富,説明も簡潔で子どもたちにとってはたいへん調べやすいサイトである。
  2. 生き物を調べる方法も書かれており,体験のモデルを示している。
  3. 子どもたちの課題の多くがヒットするほど,子どもたちの学習に即した内容である。今までインターネットを使った学習で,子どもたちは「なかなか課題のサイトが検索できない」ということを経験しているだけに,アンケートでも満足度が高かった。
  4. 感想からわかるように,子どもたちの課題や思いを広げるサイトでもある。これは,「課題解決のためのサイト」であるだけではなく,「子どもたちの興味・関心を高めるサイト」であることも意味している。単元の導入段階でも活用できるサイトである。
  5. 課題がわからない場合でも「雪の質問コーナー」でフォローできる仕組みになっている。
  6. 欲を言えば,「雪の中の生き物」は全体をまとめた説明もあると助かる(子どもの声)。それをガイドにして深く調べる子もいるだろう

★実践例3「世界一の除雪」
1 使ったサイト 「雪と暮らそう −除雪−」
2 活用方法  @調べ学習の資料として A教師のゆさぶりの資料として
3 授業の展開(社会・1時間)・・・「雪の研究室 こんな実践・あんな実践 除雪」を参考
  1. 話し合いから課題設定「札幌はどのようにして除雪をしているのか」。
  2. どのように除雪しているか予想する。
  3. 課題について調べ,ワークシートにまとめる。
  4. 新たな資料(市民の要望は除雪が一番多い)を提示し,どうすべきか考える。
  5. 考えた内容を話し合い,まとめとする
4 授業の様子
・自分たちの地域でも雪は積もるので,子どもたちは除雪の大切さはよく知っている。しかし,除雪と言えば,「除雪車と雪かき」のみしか子どもたちは知らない。実際に予想では,ほとんどの子がそういう答えだった。
・実際に調べて,札幌市の除雪の方法の多さに子どもたちは驚いていた。
 (子どもたちにインパクトがあったのは「CMA(融雪剤)」「ロードヒーティング」)
・ゆさぶり資料に対しては,子どもたちは「わかる」「わかる」と言っていた。これは「道路のはしに除雪車の雪が積もって自分たちも登校の時は不便だから」「音がうるさいから」というように経験があるからだった。
・「考えたこと」として,「新たな方法を開発する」「私たちも協力しあう」「ちょっとの不便はがまんする」等が出てきた。実際に「雪かきをがんばりたい」という声も出てきた。
5 使ってみて
  1. 校のように,除雪についてある程度の知識や経験がある地域の子にとっては,理解しやすい内容の授業となった。
  2. このサイトにある資料は社会科の一斉授業の内容として十分に使える。「除雪の種類」はもちろん,「除雪ができない時の記事」「人口と降水量の関係(もう少しわかりやすくなるとベスト)」「除雪している人へのインタビュー」「市民の要望」等は子どもたちに思考を促す価値ある資料である。これらは除雪の経験がない子どもたちにとっても有効である。
  3. 「単元の流れ」はあるものの,実際に北海道以外の学級では数時間では実践はしにくい。しかし,5年生の社会の「気候条件の特色のある地域」の中で1時間は扱いたい内容である。そうであれば,追試しやすい形の指導案があると有り難い。指示・発問・使うサイトが明確なものである。

★実践例4 ホームページについての声
1 使ったサイト 「トップページから自由に」「雪のこと何でもクイズ」「LET'S TRY!」(子どもたち) 「雪の研究室 ―教材用写真集―」
2 活用方法  @興味あるサイトを見る。
3 授業の展開(総合・2時間)
  1. 雪から思い浮かぶ言葉を発表する
  2. 写真から雪に関わる視点を決める。「雪の楽しみ」「雪のあるくらし」「大変な点」「自然と雪」
  3. イメージマップを作成する。。
  4. 雪たんけん館を紹介し,興味のあるサイトを見る。
  5. 感想を書く。(ここまで1時間)
  6. 「クイズ」と「英語」のサイトを重点的に見る。(30分)
4 子どもたちのHPを見た様子
・興味のあるサイトがいくつもあり,熱中して見ていた。興味を持ったサイトも特定されず幅広かった。ただし,生き物のサイトは人気が高かった。
・子どもたちの感想(競うようにたくさん書いた。それだけ興味を持ったHPということである)
★「雪の中の生き物を探そう」でいろいろな動物を見ることができて楽しかった。
★英語があってビックリ!クイズで初めて知ったことも多くビックリ!
★雪崩が来たときにどのようにすればいいかわかってよかったです。
★昔の人の説明がわかりやすくおもしろかったです。
 
5 使ってみて(子どもたちの声)
 「楽しみながら勉強になる」「英語も一緒に話してしまう」といった興味・関心を高めるサイト,訓練的な要素を持ったサイトとして好意的な感想が大部分であるが,今後のために意見が出ている点を記す。
【雪のことなんでもクイズ】
・答えがはずれた時,正解を出してほしい。
・ヒントがほしい。
・答えの解説があるとさらによくわかると思う。
・漢字が多いので小さい子は読みにくい。
【LET'S TRY!】
・通訳の声や文もほしい。何を言っているのか意味がわからない場合がある。
6 「雪の研究室 ―教材用写真集―」を使ってみて
・教材用写真集は教材としての価値が高い。写真を見ているだけで教材開発のイメージがわく。今回は信号機をHP紹介の
導入で使った。下を隠して提示したら,子どもたちから多くの意見が出ておもしろかった。
・このような「思考を促す教材」は提示のしかた,発問のしかたによって授業での活用価値が異なってくる。写真とともに発問例があると,教師も活用場面がわかり教材として使ってみようという気になると思う。
・写真には説明もほしい。これは「教師が説明をするため」ということもあるが,「子どもたちのため」でもある。たとえば,雪に関するプレゼンを子どもたちが行う。使うのは画像である。この教師用写真集はまとまっている。説明があることによって子どもたちもプレゼンに活用できる。(むろん教師も同様である)


4 まとめと期待

  1. 改めて充実した内容のデジタルコンテンツである
    「雪たんけん館」は,充実した内容のデジタルコンテンツである。「学び方のモデル提示」「興味・関心を高める」「思考を促す教材」「知識を補うもの」等の要素が幅広く入っている。
  2. 多様な学習に対応できる
    多様な要素を持つことは,総合のテーマ追究学習,社会の課題解決型の一斉学習,画像の部分
    活用等,多様な学習形態に対応できるということである。もちろん,子どもたちの自主学習,家庭学習としても活用できる。
  3. 教師用サイトのいっそうの充実を
    北海道以外で,「雪」そのものを単元の学習として組み入れる学校は少ないと思われる。教材としてサイトの一部を活用することが多いと思われる。より活用してもらうためには,「追試しやすい1時間プランの提示」「教材用写真の解説や発問の挿入」といったことも必要と考える。教師用コーナーの充実が待たれる。
  4. 社会科で使うために
     小学校5年生で「特色のある地域」で北海道の例を扱う教科書が多いと思われる。その学習でこの「雪たんけん館」をぜひ使いたい。教科書に沿った実践例の提示がほしい。また,ライブカメラがあるとリアルな冬の北海道の様子を知ることができると考える。
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